作業療法士がフレイルと予防方法について解説

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この記事の筆者
ゆめ先生

主に介護分野で働く作業療法士(リハビリの国家資格)。
修士(医学)。大学院博士課程(リハビリテーション学)在学中。
健康全般にとにかく興味あり、分子栄養学の資格取得。
みんなに元気に生きてほしい。

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作業療法士が解説・フレイルって何
ゆめ先生
ゆめ先生

私は15年以上、高齢者のリハビリをしています。

できるだけ多くの方に、この記事を読んで、フレイルを予防して、元気で楽しい老後を送っていただきたいです。

フレイルって何?

フレイルは、日本語にすると「虚弱」「脆弱」などと訳される、健康な状態と要介護状態の中間の状態を指します。プレフレイルは、健康な状態とフレイルの中間の状態フレイルの前段です。

人が介護などを必要とせずに、健康に過ごせる期間を健康寿命といいます。この健康寿命を延伸して、元気に長生きできる人を増やすことが高齢化社会の大きな課題です。

日本での研究では、65歳以上の8.7%がフレイル40.8%がプレフレイル57.6%が健常というデータがあります。(※1)

では、フレイルがどんな状態なのかというと、加齢やさまざまな要因によって、生理的な予備機能が低下し、ストレスへの脆弱性が増した状態とされています。

簡単に言うと、健康な人より、少し弱った状態になっていて、放っておくと、病気や要介護状態になりやすいということです。

引用:                                            ※1 Murayama H, Kobayashi E, Okamoto S, et al. National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Archives of Gerontology and Geriatrics, 2020.

フレイルの種類

フレイルには、身体的フレイル、社会的フレイル、心理的・認知的フレイルがあります。    一般的に「フレイル」という場合には、身体的フレイルを指すことが多いです。

フレイルの基準

フレイルの基準には、さまざまなものが使用されますが、一つ代表的なものをご紹介します。

改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)        
(Satake S, et al. Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(10): 992-993. )
1 体重減少  6ヶ月で2 kg以上
2 疲れやすい (ここ2週間)でわけもなく疲れたような感じがする
3 歩行    歩行速度の低下(1m/秒以下)
4 握力低下  男性<28 kg 女性<18 kg
5 身体活動  ①軽い運動・体操をしていますか          
        ②定期的な運動・スポーツをしていますか         
①②のいずれも週1回もしていない

ロコモティブシンドローム・サルコペニアとの違いは

フレイルと似たもので、よく挙げられるのはロコモティブシンドローム(ロコモ症候群,ロコモなどと呼ばれる)、サルコペニアがあります。

この2つと、フレイルの関係は下図のような感じです。

身体的フレイルの中の、身体機能低下にロコモティブシンドロームが含まれ、さらにその中の筋肉量の低下や筋力低下をサルコペニアと呼びます

ロコモティブシンドローム

運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態です。

運動器自体の障害加齢による運動器の機能低下によって引き起こされます。

運動器自体の障害は、例えば骨折、麻痺、関節リウマチ、変形性の関節症など

加齢による運動器の機能低下とは、筋肉量の減少、筋力の低下や、筋の伸張性低下による可動域制限、全身耐久性の低下など

サルコペニア

サルコペニアは、加齢に伴う筋肉量と筋力の低下。それに伴う身体機能の低下、身体パフォーマンスの低下を含む概念です。

サルコペニアの簡単なチェック方法は、輪っかテストです。下の図のように人差し指と親指でわっかを作り、ふくらはぎを囲んだ時にすき間ができる方は、筋肉が少なくなってきているかもしれません

フレイルはよくなるの?

しかし、フレイルには可逆性(元の健康な状態へ戻ることができる)があると言われており、適切な介入や状態管理を行えば、再び健康な状態に戻りうる段階でもあります。

まず、フレイルにならないようにすること、もしフレイルになってしまっても進行しないように対策をすることが必要です。

もし、ご自身やご家族のことなどで心当たりのある方は、ぜひ適切な対処をして、健康に過ごせる状態を保ちましょう。

フレイルの予防・改善方法

・栄養状態の改善

・身体を動かす

・人と話したり、交流する機会を持つ

栄養状態を改善する

ポイントは筋肉や骨を丈夫に保つことができるような食生活を心がけることです

タンパク質:体を作るために重要。特に筋肉。

ビタミンD:骨や筋肉を健康に保つ。

カルシウム:骨の材料になる。

タンパク質を摂取する

私は、高齢者施設で15年以上リハビリの仕事をしています。                          たくさんの高齢者を見てきて、まず、高齢者に何を摂ってほしいかと聞かれたら、迷わずタンパク質です。これは高齢者に限らず、若いうちからずっと、しっかりタンパク質を摂り続けてほしいと思っています。

筋肉や皮膚を健康に保ち、しっかり動ける体を維持するには必須の栄養素ですが、不足している人がとても多く、それが身体の状態に大きく影響していると感じるからです。

皆さんは、日ごろ、どれくらいタンパク質を摂取していますか?

タンパク質の摂取量は、体重あたり、1~1.5 g必要といわれています。

体重50㎏の人であれば、 50×1~1.5 g = 50~75 g

だいたいの目安としては、こぶし一つ分くらいの肉や魚、卵、豆などを一日3回摂取するくらいなのですが、皆さんこれくらいのタンパク質を毎日摂取できているでしょうか?

食物中に含まれるタンパク質の量は、量や種類にもよりますが、だいたい卵2個で約10 g、焼き魚1切れ約12 g、ステーキ100 gで約18 gです。下の写真全てを一日で摂取しても一日に必要な量には少し足りないくらいです。

実際にこれだけの量を食べようと思うと、毎食のタンパク質量を食べものだけから確保するのはかなり大変です。

特に高齢者の場合、食事量も少なくなったり、噛む力が弱くなり、肉などを避けるようになったりしてしまうので、とても不足しやすい状態です。

不足すると、筋肉が減り、痩せてしまったり、筋力が弱くなってしまったり、皮膚がもろくなりケガをしやすくなったりします

必要な量のタンパク質を食べられない場合、プロテインによる摂取がおすすめです。プロテインと聞くと筋トレをする人が飲むものと思われるかもしれませんが、そうではありません。

高齢者施設などでも取り入れているところが増えています。例えば、褥瘡(床ずれ)ができた人なども、プロテインを摂取するととても治りが早くなったりします

私自身もプロテインを毎日飲用していますし、自分の親(70歳代)にも摂るように勧めています。

プロテインには粉末を水や牛乳で溶かして飲むもの、プロテイン食品、そのまま飲めるドリンクタイプのものなどいろいろあり、高齢者でも摂取しやすい形態です。味や形態など摂取しやすいものを選びましょう。

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水で溶かす量が分からなかったり、面倒だったりする方には、さっと飲めるドリンクタイプがオススメです。1本で15 g程度(卵2~3個、魚一切れ、ステーキ小さめ一切れ分程度)のタンパク質を摂取することができます。

常温保存可能 ドリンクタイプのプロテイン

ビタミンDを摂取する

ビタミンDは、骨の材料であるカルシウムの吸収を助けます。

ビタミンDはサケ、さんま、アジなどの魚に多く含まれています。その他、たまごやキノコなどにも含まれます。魚や卵はタンパク質も摂れるので、とてもいいですね。

また、食事から摂取する以外にも、日光を浴びることで体内で生成されますので、外でのお散歩をするなどして合成を促すのもよいでしょう。運動もできて一石二鳥です。

カルシウムとマグネシウムを摂取する

カルシウムは、骨の材料となるため、骨折しやすい高齢者には必須の栄養素です。

ただ、カルシウムを摂取する際には、カルシウムの濃度を調整するために必要なマグネシウムも併せて摂るようにしましょう。

マグネシウムが不足した状態で、カルシウムだけを多量に摂取してしまうとカルシウムが過剰になり、血管に蓄積してしまい動脈硬化を引き起こしたり、筋がつりやすくなるなどの症状がでる可能性があります。

カルシウムだけをたくさん取るのではなく、カルシウムとマグネシウムを併せて摂取しましょう。

カルシウムとマグネシウムどちらも含むサプリメント

体を動かす

しっかり栄養を取って、運動をすることが大切です。栄養だけでは、フレイルの改善率は低く、栄養と運動の両方を取り入れると改善率が高くなると言われています。

歩く

まず、歩くことです。可能であれば、一日6000歩、30分程度の歩行です。

ただ、急にたくさん歩くことは難しいと思うので、可能な分から少しずつはじめましょう。

量が少なくても、頻度が歩かないよりずっといいです。

定期的な運動

歩くことの他には、軽い運動でもよいので、定期的に体を動かすようにすることです。週2~3回程度は実施できるのが理想です。

膝や腰が痛くて歩けないという方も、座ってできる体操などを行うようにするとよいでしょう。

人と話したり、交流する機会を持つ

これも、フレイル予防に大切な要素です。

一人暮らしや、他者との交流が少ない人はフレイルになりやすいとされています。

近所の方との交流や、地域の集まりに行く、高齢者クラブなどに参加するなど積極的に人と関わるようにすることが大切です。

ご家族の方は、できるだけ会話をするようにしたり、遠方であればお電話をするなどもよいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。

フレイルを予防して、できるだけ長い期間、元気に過ごされること願っています。

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